【W杯】日本 vs ドイツ
森保監督の監督人生において最初で最大の博打だったと思う。
森保監督はかなりの安定志向の監督で、広島時代含め、博打をしない堅実な采配、それまで築き上げてきたことをそのまま出すことが最善手だというタイプの監督でした。
それがこの大一番でこの博打を打てるとは・・・。そこに驚きました。
博打であるがゆえリスクがあり、当たって成功することもあれば外れて大失敗になることもあるわけですが、なので今回のはあくまで当たったというだけで毎回この采配をすれば毎回成功できるベストの采配だというわけではないのですが、でもするしかなかったと思う。
博打だと思ったのは、後半から行ったシステム変更の方ではありません。
あれはむしろ堅実な正しい采配で、実際前半は戦術的に攻略されるとサッカーとはここまで(内容が)大差になるものなんだと思い知らされるような展開でした。
それを後半は攻略された状態をイーブンに戻してあくまで力勝負に持ち込むことができていて、これは本当に見事な采配だったと思う。
まずそもそも試合の途中でここまで大規模なシステム変更を行い、そして実際に試合の流れを大きく変えることができた試合というのが、日本代表の歴史の中で初めてと言っていいくらいの偉業でしたが、今日の試合のポイントはそこだけではありません。
このシステム変更はどちらかというと崩壊していた守備面を強化するためであり、攻撃力を上げるためのそれではありませんでした。
変更により穴だらけだった陣形が修復されましたが、それで失点を抑えてもそれだけでは0-1のまま負けます。
博打だと思ったのは、そこから次々と攻撃的選手に選手交代させていったこと。
これが相当博打だったと思う。
攻撃的選手を入れていけば攻撃力が上がって点が取れて勝てる、なんて簡単なものではありません、サッカーは。
どちらかというとこれはウイイレなどで私たちがゲームとしてサッカーをやる際にその方が楽しいからとやる采配で、現実のサッカーで言えば暴挙です。
システムとしては特に変更したわけではありません。
つまり攻撃的選手を入れたところで、やらせる仕事は守備になってしまうのです。そうなるとただのミスマッチ。プラスに働きません。
が、勝つためには点を取るしかないということから取ったこの大博打が今回は当たった。
ドイツはとても理詰めのサッカーをする国です。
そのため、常識的な方法をこちらが取った場合、対応する常識で返されてしまい、上回られます。
が、日本がやった「非常識」がドイツの辞書になかったため、ドイツを混乱させることになったのではないでしょうか。
将棋でいえば、こちらが定跡で指す場合は相手もその場合はこう返すのが定跡という答えが見えます。
が、実際は評価値が下がるようなハチャメチャだったとしても、常識ではありえない事をした時、相手が正解がわからなくなる。
そこに付け入るのが唯一日本が勝ち筋が生じる(100になるという意味ではなく、0ではなくなるという意味)だったのかもしれません。
個人として特筆したいのは権田と浅野です。
権田に関してはPK献上のことがあるのでどうしても一般の目からは減点の目で見られると思うんですが、今日の試合のMVPは権田だと思ってる。
そのくらい後半ビッグセーブ連発してました。
守備の選手が失点を1抑えることは攻撃の選手が得点を1取ることと同等の価値があると思っているので、世間は得点取ったから堂安だ浅野だと騒ぐのかもしれませんが、私は権田にMVPを与えます。
浅野に関しては、今回見直さざるをえないと思いました。
念のため先に書きますが元サンフレサポの私は広島時代から浅野を見て、そして羽ばたくのを応援していますが、冷静な目で見てずっと彼は日本代表レベルではないと思っていました。
むしろ日本代表に出てくるたび、ポイチ身びいきすんなとまで思ってました。
浅野は足が速い。
が、それ以外の点がからっきしだめで、足以外のストロングポイントのない選手と評価してました。
それはW杯に入るまでの日本代表としてのプレーを見ていてもなお。
が、今日のゴールに関しては、点を取ったから素晴らしかったということではなく、浅野をずっと見てきた人間からすると驚くようなプレーを見せてくれました。
あのプレーには3つの難しいところがあります。
中継などでは2つは解説の人が散々言っていたので俺もそう思ったよって人が多くいそうですが3つあります。
まずトラップ。
ボールの滞空時間が長く、誰しもがトラップに注目していたシーンでしたが、こういう技術的な部分が下手なのが浅野(笑)
大迫ならともかく、浅野だと上手くできないんだろうなぁ、やれるかなぁとどちらかというと心配して見ていたら、あのきれいなトラップ。
浅野史上歴代最高までありますよあれは(笑)
実際(ある程度はスカウティングもするであろう)ドイツの守備の選手も、あれだけ時間の猶予があったにも関わらず、トラップが成功されたら位置関係がまずくなる位置、に居続けてました。
あれを見て「お前どうせできんやろそれ。こぼすだろうからその場合のための位置に立っとこ」ってメッセージを感じた。
次にうまかったのが、そこで守備の選手が少し損をしてしまったのですが、そこからうまく体を入れて相手に割り込ませずキーパーと一対一になれるようなポジションをキープしたこと。
トップスピードで走れている場合ならともかく、一旦スローダウンしている状況からあの位置をキープする立ち回りは簡単に見えて簡単ではないです。
そして最後のシュート。
かなり技術的に難しいシュートで、メッシとかそういう人なら涼しい顔でやれるあのコースへのシュートも、浅野だしなぁ(以下略)って思ってたらよく決めたと。
その技術的な点も驚いたけど、同等に驚いたのがあの状況でノイアーを相手にあそこに撃てるメンタル。
浅野は昔はどちらかというとメンタルの弱い選手でした。
決定機にもパスに逃げる(Jリーグではよくある)体質をそのまま持った選手で、実際過去に日本代表でたまに出てきた時もそれを繰り返していた。
が、今日の試合では、流石にそれは強引だろうって思うようなシーンでもまず自分がシュートするって姿勢を第一選択にしていました。
ここが成長を感じた。
ともかく、監督的にも選手的にも結果的にもとても満足した試合でした!