【将棋】オリジナル戦法⑤ 青森 - 横歩取り
青森の変化の中で最も構想力から求められる、横歩取りの変化。
これが最も相手側の難易度が高いですが、同時に最も自力で指す楽しさが大きいと思います。
力戦というより、どういう方針で指せばいいか自体が難しい将棋。
青森 - 横歩取り
これも後手の方が説明しやすいのでこちらが後手で説明します。
例の出だしから相手が取れるものは取ると横歩を取ってきた場合に、
銀を当てて飛車を振ってこの形になります。
これを基本形としますが、この将棋は指し手というより構想に関する将棋になるので、まずそこから入ります。
図面ではなく文字が中心となりますがご了承ください。
構想
早速です。
【再掲】基本図
ここから後手はどういう方針(構想)で指しますか?
そしてそれを選択する理由は何ですか? ただなんとなくとか好みだからとかではなく、この場合にそれが一番いいという理由が必要です。
この問いに対しちゃんと構想レベルで答えられたらそれだけでアマチュア四段以上あります。
そのくらいこの将棋は全くの未知の将棋になり、類型の将棋すら指したことがないものになります。
前例を踏襲できないのでゼロからの自分自身の頭での考えが必要。
とは言え、完全なる唯一の正解というのはないのであくまで自分の構想を説明します。
この局面を整理します。
- 先手は歩越し飛車の形を強要されている(デメリット)
- 先手は対抗形のように単純に左に金銀を寄せて囲っていけない(どちらかというと38金と右に開くことを強要されている)(デメリット)
- 先手は歩を得している(メリット)
この条件においてデメリットをデメリットとして押し付けるにはどうするか。
まず横歩を取られているのでと普通の横歩取りのように指してしまうと、デメリットが消えます。
横歩取りの将棋においては歩越し飛車も金開きもデメリットになりません。
よってこれに付き合ってはいけません。
局面の評価値としてはこれでも後手が悪くないかもしれませんが、構想力の問題です。
歩越し飛車をマイナスにし、金開きをマイナスにするには――振り飛車にする事が考えられます。
対抗形の将棋で居飛車側が好んで金を右にやったり飛車を歩越しで使う将棋なんてありませんしそのメリットもありません。
さて、今後は先手の立場になります。
後手が振り飛車で指そうとしてきてます。
その場合に自分はどう指すのがいいですか?
普通に対抗形にしてしまうと先ほどの通り損してしまいます。
そこで、歩越し飛車を解消し、右に金をやらなければいけないことをマイナスにしないには・・・そう、相振りにしてしまえばいいですね。
歩を突いていった上で飛車を左にやれば歩越しを解消できます。
玉を右に囲えば金を右にやったマイナスも解消します。
これで自分側のデメリットが消え、歩得だけが残ります。
ではまた後手の立場に戻ります。
以上のことから、後手として一番得な選択は
- 自分は振り飛車にする
- 相手に相振りにさせない
この構想で進めると最もよいということになります。
基本手順
構想が確認できたのでやっと具体的な手順に移ります。
再び基本図に戻って
ここから玉を右に囲いに行くかと思いきや、まず74歩を突きます。
次に端歩を突き、銀を立ちます。
そうしてから玉を入城していき、以下お互いに自然に囲い合うと、こんな感じの展開になります。
これが青森横歩取りの際のこちらの基本的な流れになります。
74歩
【再掲】
振り飛車にすると言ったのになぜ玉を囲いにいかずにむしろスキを作っているように見える74歩を突いているのか。
それは構想の段階で確認した、「相手に相振りにさせない」を実現するためです。
先手が相振りにする場合、75歩から三間にするか、75歩~86歩~85歩から向かいにするかという手順になります。
これを一手で防止できるのが74歩です。
この手を指す猶予は一手分もなく、相手が76歩と突いてきたら(もしくは突いてある形なら)即74歩と合わせないとすぐに75歩と突かれて相振りを防げなくなります。
よって先に玉を右に囲ってる余裕は一手もありません。すぐに74歩と突いてください。
端歩
「74歩が相振りを防止するためというのは分かった。でも端歩ってなんで? 相振り防止できたんだからのんびり端歩突いてないで玉囲う方が優先やん」
と玉を囲いに行ったとします。
この時点で既に咎められる三手一組の手があります。
これはアマチュア二段程度の棋力があればわりと気づけるかと思います。
まず75を突いて
取れないとその時点で作戦大失敗なので取りますが、そこで角を出ると
これで受けがありません。
角成を防ぐには桂しかありませんが74歩でゲームセットです。
これがあるため、この角の時に桂ではなく銀で防ぐために、玉を上がる前に銀を上がっておく必要があります。
しかし、最終的に振り飛車にしようとしているので、銀は82ではなく72に上がりたいです。
というわけで72に上がってみますが――
ここでも咎められる三手一組の手があります。
これは初段くらいの人から見える、気持ちのいい手ですね。
飛車を切って角を入手し、その角を打ち込むと香が助かりません。
厳密には92飛と受ければ受かりますが、飛車をそんなとこに手放してしまっては大失敗です。
55(46)角成と引き上げられてアマチュア的にはやる気がしないレベルの大差です。
端歩を突いたのは、この角打ちを防ぐためです。
端歩を突いてから72銀を上がっていると、
角を打ち込まれても香を上がれば受かります。
一応55(46)角成で馬は作られますが、空成で作られる分にはそこまでダメージはありません。
全くないわけではないですがこちらにも飛車が手持ちになっているという大きなポイントがあります。
もしされたら73銀と上がって対応し、以下は振り飛車にこだわらずに横歩取り風に指します。
左辺の理想形
先手の相振りも防止して相手の飛車が4段目で行き場を失っている場合は、飛車を浮いて34銀の形を作るのが後手の理想形になります。
この図は若干盛りましたが(笑)、相手の飛車が圧迫されて死にそうですね。
また、相手の出方次第では棒銀から2筋突破の筋もあります。
ちなみにこの手の展開で飛車が死んだ時に、
「よっしゃ上手く返したぞどや!」と銀を食いちぎって打ち返してくる場合がありますが、
冷静に自然に対応してこの局面は大差です。
持ち歩
序盤の注意点ですが、後手の駒台にある一歩は基本的に使ってはいけません。
この歩は飛車をぶつけられた時に拒否するために必要な歩です。
飛車をぶつけて交換を挑んでくる順は先手からすれば金を右にやられているデメリットをむしろメリットに変える順となり、これを実現させてはいけません。
歩切れになってしまうのでとても打ちにくいのですが、拒否してください。
最後に
この将棋は先手側を持っても高段者ほど面白いと思います。
全くのゼロからの構想力勝負になり、考えがいがあります。
私は後手側を持って論理的帰着から構想を作り出しましたが、同じように先手側を持って構想を作り出すのは楽しそうじゃないですか?
これに関して、青森の開発のきっかけとなった友人(詳細はよもやま話にて)とこの戦法で対局した際に、大変面白い構想をぶつけられ、私の構想を上手く打ち破られました。
(ただ対局に負けた、ということではなく、構想勝負で打ち破られた)
その具体的な手に関しては皆さんに知られてしまうと困るので(笑)ここでは書きませんが、先手側を持っても、構想を考えれば上手く立ち回れる戦いになるということです。
あなたも探してみませんか?(笑)