【将棋】オリジナル戦法① 欲張り引き角

長年将棋をやっていていくつかオリジナルの戦法を開発しているので、それについて書いてみます。
第1回。

欲張り引き角

※この戦法は特に名前をつけてなかったのですが、便宜上上記の名前をつけておきます。

この戦法は私が20代の頃、まだ将棋倶楽部24で指してた頃に開発したオリジナル戦法です。


この戦法を人に言うとたいてい「なんだ飯島流か」という反応が返ってくるんですが、


まず引き角自体は飯島七段が飯島流とか言い出す前の時代からあったものです。(だから個人的に、引き角戦法のことを飯島流と呼ぶのは違和感があります)


さらに私がこれを指してたのは飯島流が出てくる前の時代です。(引き角という大まかな戦法自体はありました)


そして私の欲張り引き角は玉の入城を後回しにして居玉のまま桂とか端とかを優先して突く戦法になっています。


今現在も私は飯島流をちゃんとは知らないのですが、飯島流は桂や端は後回しにして先に一直線に玉を囲うと思います。

実際おそらく最善手順はこうだと思うのですが、私の欲張り引き角は最大限に突っ張った指し方になります。


この戦法のすごいところは、もし居飛車が後手番の場合、こんな状況になることです。

これで相手の手番。


こんな状況から相手に先攻されても嫌と思わない受け将棋の人向けの戦法です(笑)

(もちろん相手が所詮アマチュアで弱かったということはありますが)これだけ突っ張り、隙だらけの陣形にも関わらず、たくさんの振り飛車党の人たちが頭をひねってこれに立ち向かい、結果特にこの手順で潰れるという手順も現れなかったので(私がこれで負けたことがないということではありません)、そういう意味で成立している戦法ではあると思います。

 

ポイント

定跡書として書くわけではないので(実際アマチュア程度の棋力で定跡手順とか片腹痛いです)大雑把にポイントを。


①相手が四間もしくは三間に飛車を振ったのを見てから引き角をすること。
そうすることで一手得できます。
これは言いかえるとあんまり早く引き角を表明しないということ。


こちらが後手番で説明しますが、
▲76歩△84歩▲66歩△62銀▲78銀△14歩▲16歩△54歩

こんな感じで角道を開けないまま「あくまで自然に」指して飛車を振ってくれるのを待ちます。


▲68飛△32銀
飛車を振ってくれたのでここでやっと引き角を表明します。


銀を上がった時点で相手も引き角に気づくので、以下自然に対応するとこうなります。
▲67銀△85歩▲77角△31角▲88飛

これで一手得して引き角にできます。


②左側の端歩は事前に突いておく。
さっきの手順中でもなんとなく端歩の交換を入れていますが、これは大きな意味があります。
相手が引き角に気づくのが遅れてこのように飛車先交換できる形になることがあります。

その際に端の交換を入れていないと、飛車先からの角交換後にこちらも22角の打ち込みが生じてしまい、必ずしも堂々と86歩といけなくなります。


③右の端歩は仕掛け封じ
盤面は再び先手番に戻します。
引き角で36歩を早い段階で突いた場合、この銀出が気になります。

次の65銀からの歩取りが結構受けにくく見えます。
46歩と突いて47銀を用意すると角道が止まりますし、66歩と突くと64歩と突き合われて余計に相手に仕掛けを与えてしまいます。
基本的にこの形から仕掛を与えると居飛車側が苦労するというのが経験上の感触です。


それに対し、飛車を浮いて受けるための準備です。
▲26飛△65銀▲35歩


強くなれば必ずしも先に付く必要はなく後回しに出来はしますが、この戦法は後回しにできる手を玉を囲う手より先に指す欲張り戦法なので(笑)

なぜ早い段階で桂を跳ねるのか

相手の44銀型を防ぐという意味があります。
早い段階で桂を跳ねていると相手が45歩と突けなくなるので、結果44銀型を作れなくなります。
すると銀の使いみちで54銀が自然になるのですが、それ(からの65銀)に対しては先ほどの飛車浮きで対応できるので、振り飛車側からの動きが難しくなります。


囲いが大幅に遅れて、囲いが完成してないままに攻められるのが一番怖いわけですが、相手の仕掛けを消した状態で待機すればいくらでもあとから囲いに手をかけることができる。
これが欲張り引き角の骨子です。


実際は44銀型にされてもそれはそれで戦えるのですが、相手にとっても44銀型にできるのなら戦えるという安心を与えてしまいます。
それより銀の扱い方、仕掛け方に四苦八苦してもらった方が得です。

戦術的な意味

相手の仕掛けを事前に十分に警戒した上で組むのが欲張り引き角なわけですが、では相手が仕掛けを断念して普通に組んだ場合に、こちらも入城が終わって飽和したらどうするのでしょうか。


その場合の戦術は・・・そこから銀を自陣にくっつけていき、さらに穴熊に組み替えて待機します(笑)


この時都合がいいことに、こちらの角が利いているため相手が84歩を突けず、つまり銀冠への組み替えができなくなり、先に駒組みの飽和に達してしまいます。



あちらは駒組みが飽和な状態でこちらはまだ未完成な部分がある。(88銀79金68金、場合によってはそこから86歩87銀78金など)
それはつまり相手の方から仕掛けてくれる絶好の条件が揃ったことになります。
しかし前述の通り仕掛けは基本的に封じました。
つまりこの戦法の戦術的な意味は、待機を繰り返した上で相手が無理攻めしてきてくれる条件を整えることにあります。
その意味で本質的に受け将棋向けの戦法です。

あとがき

本文中に仕掛けを封じたとか色々言ってるわけですが、今の時代、この手の戦法紹介を書くとソフトにかけて「この手順で潰れる」「こうしたらどうすんの?ww」と言ってくる人がいるわけですが、この戦法を開発した当時はまだソフトがない時代で、私はこの戦法を自分自身で何千局と指すことによって構築してきました。
のでそのことに意味がある戦法です。


将棋倶楽部24時代に、まだ初段(リアル棋力の方)くらいしかなかった頃から三段くらいまでになるまでの間、私の20代の頃の時代に散々指して組み立てたもの。
何千局の中で振り飛車側の決定手順とかも特に出てこなかったもの。
(ちなみに81道場六、七段(リアル棋力四、五段?)の今でも、普通に使ってます。特に潰れません)


飯島流はもちろん当時引き角に関する定跡手順なども一切なく、私以外にこの戦法を使う人もおらず、完全に自分自身の経験の積み上げで築き上げてきたので、とても思い入れがあり、そしてソフトで調べて手順トレースする人が一定数いる現代において、今では得られない非常に貴重な財産だと思っています。
私が藤井システムを将棋界で一番美しいと思っているのと同じ理由です。