【将棋】 叡王戦
叡王戦が面白いです。
けっして他棋戦での戦績から見て今最強の二人がぶつかったとは言えないと思いますが、でもお互いに初タイトル戦であり、初タイトルがかかり、そしてお互い今後何度もチャンスがありそうではない、そんな状況での是が非でもこのチャンスを活かしたいというお互いの気持がぶつかる戦い。
それが将棋の内容云々以上に人間ドラマとして面白い。
七番勝負が始まる前はニコ生/abemaでの人気により多分にもれず私も高見に少し傾いた応援で、実際ニコ生アンケートでもダブルスコア近くを出して高見を応援する人が多かったのですが、インタビューや前夜祭のスピーチなども聞き、今回金井の人柄を初めて知り、今では金井もすごく好きになってしまいました。
ありきたりではありますがこの叡王戦でよく言われるセリフ、「どちらも応援したい。どちらにもタイトルを取ってもらいたい」というのが私においても正直な気持ちです。
勝負は高見の二連勝。
そこで見えてきたのは、終盤における秒読み勝負では高見の方に分がありそうだということ。
しっかり時間をかけて中盤でポイントを稼ぎに行くことに関しては金井も十分に強いのですが、終盤でどうしても逆転されてしまう。特に秒読みが絡むと。
そしてそれがどういうことかというと、今回第1局、第2局で5時間を選んだわけですが、この先の短時間での勝負になるとより一層高見の優位性が出てしまうということ。
この2局を負けたのは単に2敗という以上に金井にとっては厳しかったはず。
話は変わって、叡王戦は将棋の対局の見せ方が本当に上手いと思います。
将棋の伝統、文化は十分に尊重しつつも、けっして堅苦しくせずに今の人たちが新たに将棋に入っていきやすい雰囲気を作っている。
(そこにプロ棋士側も全力で協力しているのがまた素晴らしい)
その魅せ方に関して、第1局の観戦記が本当に素晴らしかったです。
りゅうおうのおしごとの原作者、白鳥さんによる観戦記は、通常の観戦記ではありえない7回に分けた長編の観戦記。
そしてその内容が、りゅうおうのおしごとと同じように、非常に熱く叡王戦、対局者の二人を描写したものでした。
観戦記の仕事が今回で最初で最後であるということを前提にはしていると思うので他の観戦記者がこれを真似することは出来ないこととは思いますが、それでもこの観戦記はこれまでの観戦記の中で最も素晴らしいものでしょう。
長い観戦記自体は将棋雑誌(将棋世界)の方を買えばいくらでもあります。
でもそれらはほとんどが、将棋の内容に関して深く掘り下げるから長い。
しかし白鳥さんのそれは当人が将棋(を指すこと)に詳しくないということもあり、ひたすら人間の方を描いています。また、読み手と同じ素人目線で書かれています。
ラノベで物語を描くように、観戦記を棋譜解説ではなく人間ドラマとして書いたそれは、本当に素晴らしいものでした。